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(新)組織の活性化 第3回 活性化に成功したチームの条件
2007年10月10日 17:22

前回までは、企業組織が現在抱えている活性化に関する問題点を述べてきましたが、組織規模が大きくなると汎用的な解決手法が無いようなので、小さな規模で成功した幾つかの実例から、チームの活性化の要点を述べたいと思います。

「活性化されたチーム=好業績を挙げたチーム」という定義に置き換えて、好業績を挙げたチームに共通する要因を整理してみます。好業績を挙げたチームとは、個人の成果の総和を上回る成果を挙げたチームのことを示す。つまり、個人の成果の総和に加えて、メンバ相互協力の結果得られた「+αの成果」を生み出したチームを指す。野球を例にとると、打率、防御率、得点力、盗塁数、守備率などの個人成績を総和した成績が1位でなくてもチーム成績が1位になったチームのことである。いわゆるチームワークの良いチームのことであるが、ワーキング・グループとは全く異なる。

    • チームワークとは、他人の意見に耳を傾け、善意に解釈し、建設的に反応し、彼らの関心事や成功を認めるといった価値観がチーム全体として集約されたものである。これは、個人成果の総和に加えて、複数メンバの協同作業の成果が加味される。
    • ワーキング・グループとは、メンバ個々の成果水準を底上げすることを目標に、各メンバの目標と責任に焦点が当てられるが、コラボレーションによって大きな成果を求めることはしない。
ハーバード大学の研究では、数十に及ぶ好業績を挙げたチームを観察した結果、チームワークの良いチームの要因を次のように整理した。

    1. チームのメンバが心底納得できる目標が、掲げられなければならない。「優勝する」、「1位になる」、「最先端を行く」といった有意義な要素が含まれ、このような有意義な目標に向けた作業を通じて「目指すべき方向」および「合意」を見出して、それらを更に深める。
    2. チーム以外の組織から所期の方向性や目的が示された場合でも、チームの目的はメンバの目的であることを納得し、その責務を果たそうとする意識が芽生える。経営陣がチームに権限を与えない限り、チームは所期の目的を自分達の目的と認識しないというのは思い込みで、真のチームへと進化する可能性を奪うことになる。
    3. 成果を向上するチームは、上位者から与えられた課題や機会に対応しながら、チームの目的を形成していき、チームに期待される成果を理解し、期待に沿った戦略に従って行動する。それ故に経営陣は、チーム編成、チームの存在意義および達成すべき課題を明示する責任を負う。
    4. ベストのチームとは、チーム全体としても、メンバ個人としても納得できる目標を追及し、全員が合意できるまでは妥協することなく時間と努力を傾け、チームが存続する限り継続し、改善していくチームである。
    5. チームの目標は、「欠品率を50%下げる」といった具体的かつ容易に測定可能な数値で表現する。チームの目的と具体的な成果目標が密接に関係付けられ、広範な使命を具体的かつ定量的な目標に落とし込むことで、メンバは有意義な目的を設定しようと取組む。この作業を通じて、チームは確実に前進していく。
 こういうチームになるためには、メンバ全員の深いコミュニケーションや合意に向けてのメンバ個々の熱意ある努力が不可欠であり、チームの人数が少ないほど可能性が高まる。
  では、良いチームとなるチーム人数やメンバの構成条件はどのようであろうか? ここでもハーバード大学の研究チームの調査結果を紹介する。

    1. 成功したチームの事例から、チームのメンバ数は10人~25人であった。
    2. チームのメンバの構成条件(スキル関係)は、同じ技術や職能を身に付けたメンバのチームより、異なる技術や職能を身に付けたメンバのチームのほうが成功の確立が高い。各人が相互補完的なスキルを身に付けているのがベストである。
    3. 課題やチャンスを発見し、解決案を評価し、取捨選択して意思決定できるスキルを備えたメンバが数人必要である。この種のスキルはチーム活動を通じて習得される。
    4. メンバ各自は、「他人の話を虚心坦懐に聞く」、「他人の興味や成果を認める」といったコミュニケーション能力および建設的対立のスキルが必要である。
 更に、成功したチームは必要とされたスキルをどの位備えていたか、メンバの作業分担はどのようだったかについて、調査結果は次のように報告している。

    1. 成功したチームでも、メンバが最初から必要なスキルを全て身に付けていた事例は皆無であった。例えば、マーケッティングに関するプロジェクトにも拘わらず、マーケッターとしてのスキルを備えていたメンバが皆無だったチームが成功していた。
    2. チーム編成のメンバが、社内の肩書きに左右されたり、メンバ固有のスキルを考慮しなかったり、スキルを偏重し過ぎると失敗チームとなった。
    3. チームの問題解決能力を開発するには、チーム学習が強力な手段である。既存のスキルや新しいスキルと同等に学習能力を評価していた。
    4. 共通の目的を達成する上で、どのような相互協力をすれば良いかについて、固い合意が必要だった。メンバ全員が、個々の責任分担、意思決定と修正方法、納期厳守の方法、スキルの開発等について合意をしていた。合意形成が最も重要なことであった。
    5. どのメンバも同量の作業を分担し、リーダーを含めた全員がチーム活動の成果に具体的な貢献をしていることを明確にして理解させていた。
 成功事例を整理していくと、成功するチームに共通する条件は、「合意」、「協同責任」、「実践中のチーム学習による能力向上」である。これは、従来のメンバ個々の作業分担と責任をピラミッド型組織に固定化し、ピラミッド頂点のリーダー能力に過剰に期待していたマネジメント手法を根底から覆すような条件のようである。このような条件をもう少し、掘り下げてみる。
 我々は長い間、メンバがリーダーによって決められた分担の責任を果たし、納得しなくても協同作業のための共通ルールを守れば成功するという作業の手法(個人中心主義)を身につけてきた。しかし、「全員が納得するチーム目標を設定し、全員が合意する意思決定仕組みを構築し、連帯責任を持つ」というコミュニケ-ションや合意のためにものすごい時間とエネルギーを使う手法(チーム中心主義)に転換せよとつきつけられたのである。

 とにかく、チームの全員が肩書きや過去の実績を捨て、チーム内で素直に話し合い、合意形成のプロセスを築く一方で、仕事への適性や役割分担、協同作業の目標や作業方法についてチーム全員で合意・決定していくのである。素直な話し合いに時間をかけないと協同の信頼感と合意が形成されないのである。ビジネスのスピードを要求される現代に、逆行するようなマネジメント手法である。過去に、小生も意思決定手法として全員合意の仕組み構築に挑戦してみましたが、コミュニケーションの不足、本音の意見が出にくい、意思決定の時間不足等の要因で断念しました。全員合意の仕組み構築は、メンバ全員が過去のピラミッド型組織の概念を捨てて、「チーム中心主義」という新しい仕組みを創りだすという決意をし、実践で発生する様々な問題を学習しながら解決していくことが必要なようです。現時点では、短期間かつ汎用的な手法は未だ無いようです。
次回から、成功したチームの事例をもっと詳細に研究していきます。
運用研究レポート
(新)組織の活性化

組織タイプ、モチベーション(心理学の視点)、チーム力の強化、変革のリーダーシップ、社員のマネージメント等、キーワードの解説や組織の活性化をはかるための手法について、事例を交えながら理論や実践方法を述べていきます。

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筆者紹介

佐野詔一(さのしょういち)

1945年生まれ。

富士通㈱(OSの開発&大規模ITシステム構築に従事)および(株)アイネット(大規模ITシステム構築&ITシステム運用に従事)において、大規模ITシステム構築&大規模ITシステム運用経験を経て、現在はITプロジェクト・マネジメント関係を専門とするITコンサルタント。産業能率大学の非常勤講師(ITプロジェクト・マネジメント関係)を兼任。当サイトには、「IT部門のプロジェクト・マネジメント」ついて研究レポートを12回にわたり掲載。

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