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品川海外システム運用研究会 第2回 クラウド 対 米政府 ~Cloud Pros and Cons~ クラウド賛否両論
2010年11月02日 15:15

日本でもクラウドコンピューティングが脚光を浴び、各企業が競ってクラウド対応の製品やサービスを提供している中で、海外ではクラウドに関してどのような話題が取り上げられているのでしょうか。クラウドのリスク・リターンをめぐる米政府とクラウドサービス提供者側の見解に焦点を当ててみました。

クラウドの安全性を不安視する米政府

アメリカでは企業だけでなく政府によるクラウド利用が進んでいます。企業によるクラウド導入と同様に、政府機関への導入においても様々メリットがもたらされると見込まれています。そして一般向けのクラウドと同様に、セキュリティに対する不安の声が国会・議会議員や政府のIT部門から挙がっているそうです。そんななか、米国会計監査院 (GAO)で情報セキュリティ問題を担当するGregory Wilshusen氏によれば、米行政予算管理局(OMB)や他の政府機関 が政府のセキュリティ施策をまだ固めていないにも関らず、一部の政府機関がクラウドへのデータ移行を始めているそうです。

Wilshusen氏は下院監視・政府改革委員会に対し、「クラウドコンピューティングの導入によってセキュリティの安全性が様々なリスクにさらされることになる。そしてそのリスクはセキュリティ対策や保証がサービスプロバイダに丸投げになってしまうことや、他の顧客とリソースを共有しなければならないことに起因する」との見解を示しています。

Wilshusen氏によれば「オバマ政権がクラウド化を推進しているにも関らず」、GAOが主要政府機関のIT 担当者に行ったアンケートにおいて、24機関中の22機関が「クラウドコンピューティングのセキュリティに不安がある」と答えたそうです。71日に発表されたGAOのレポートでは、IT担当者たちが不安を感じている要因がいくつか挙げられています。

◆ ベンダーによるセキュリティ対策が、効果を発揮しない可能性

◆  ベンダーの行うセキュリティ対策に対して、政府機関が介入できない可能性

◆  外部からのハッキング

◆  ベンダーとの関係がなくなったとき、データにアクセスできなくなる可能性

 

また、一部の担当者はクラウドコンピューティングのセキュリティそのものに対して疑問を呈しているそうです。たとえば下院議員のDarrell Issa氏は「毎月、毎週、或いは毎日のように問題が発生してしまうことからも見て取れるように、政府においてさえもセキュリティの保障はしていない。民間企業がクラウドにおける安全を一体どこまで保障できるのか聞きたいくらいだ。」とまで答えています。

このようにクラウドコンピューティングの導入によって政府は(経費削減によって)資金と最新技術へのアクセスを得ることができる一方で、「未知のセキュリティリスク」と向き合わなければなりません。Diane Watson下院議員は、ベンダー側がどう連邦の安全基準を実現していくのかについて具体的に示さなければならないといいます。

そんななか、政府機関は合同でセキュリティ対策に乗り出したそうです。Federal Risk and Authorization Management Pilot program (FedRAMP) (連邦政府によるリスクと権限に関するパイロットプログラム)と呼ばれるこの取り組みではセキュリティと保障の基準策定を目指しています。

クラウドサービス提供者の視点

ここで、民間企業の見解を見ていきましょう。

Google Federal(Googleの政府機関向け事業)の代表であるMike Bradshaw氏は、クラウドはむしろセキュリティを高めると語っています。たとえば、マシンを複数の場所に分散して管理するため、ハッキングが難しいといいます。また、マシンの分散によって自然災害の被害も最小限に防げるようになります。さらにBradshaw氏によれば「クラウドによってデータが一元管理されるので、微弱性などが発見された際にも迅速且つ画一的な対応が取れます。これまでのように、ばらばらに配置された数千ものデスクトップやサーバにパッチを当てていく必要がないので外からの攻撃などにも迅速に対応できる」そうです。

米政府のとらえるクラウドの魅力

Salesforce.comDaniel Burton氏はクラウドコンピューティングがもたらす利益は「計り知れない」といいます。ブルッキングス研究所が発表したレポートによればクラウドの導入によって政府機関は25%から50%IT予算を削減できるそうです。Burton氏はそれに加えて新技術の開発を早める効果やITプロジェクトの失敗の危険性を下げる効果もあるといいます。

オバマ政権の連邦政府CIOであるVivek Kundra氏は政府のITプロジェクトには「かなり派手な失敗リストがある」と認めた上で、クラウドがもたらす効果についても認めており、クラウドコンピューティングはここ10年間で430から1,100箇所に増えてしまった政府のデータセンターの削減にも寄与するであろうと語っています。しかしながら、「クラウドへの移行はコストだけが問題ではない。これまでのようにまた新たなデータセンターに投資するということではなく、よりよいサービスを提供できるようになることがポイントだ」と語っています。

利益とコスト、リスクとの折り合いをどうつけていくかがアメリカ政府のクラウド導入の鍵になるでしょう。しかしこうして失敗を恐れながらも民政一体でクラウドが改善・実用化されている事実からもクラウドの未来は明るいと感じました。日本では政府主体で自前のクラウドが構築されましたが、どうしても民間からはクローズされた状況です。ここに日本とアメリカにおけるクラウドの浸透力の違いがあるのではないかとも感じました。

参考:

Lawmakers question the security of cloud computing (Computerworld)

http://www.computerworld.com/s/article/9178793/Lawmakers_question_the_security_of_cloud_computing?taxonomyId=13&pageNumber=1       

[Sun]CIOが抑えておくべき海外・国内政府のクラウドへの取り組みから考えるクラウドの潮流

http://cloudzine.jp/solution/2010/04/13/000039.html

 

~品川から世界のITシステムをみつめる~

品川港南口桟橋ちかく。

頑張れば東京湾を見渡せる、とある会社の会議室で、東京湾の向こうに広がる太平洋と世界に思いを馳せ、海外のビジネス市場でどのようなITシステムがトレンドとなっては廃れていくのか、またそれらを支える技術はどんなもので、私たちの生活やビジネス環境はどう変わっていくのかを、海外システムに興味を持つ営業やマーケティング、技術者が集まり、夜な夜な熱い論議を交わします。
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