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品川海外システム運用研究会 第1回 業務システムのクライアントはいつまでPCなのか
2010年10月20日 09:00

朝、会社に着いて席に座り、パソコンを立ち上げる

この、あたりまえのような一日の始まりが当たり前でなくなることを想像できますか?

スマートフォンの登場によって、モバイル端末の可能性が広がっていると実感している方も多いと思います。本レポートではそのスマートフォンがパソコンに代わって業務システムのクライアントになるということの意味についてみていきます。

モバイルがもたらす変革

世界中のIT企業が「モバイル戦略」を重要な事業戦略の一つとして掲げていますが、中でもSAP社は今年の3月にはスマートフォン向けのSAP CRMの開発を発表しているように、モバイル事業に積極的に取り組み業界をリードしている企業のひとつです。

同社のGlobal Ecosystem & Partner Group担当上級副社長のSingh Mecker氏は以下のように話しています。

"われわれの顧客はみなモバイル端末の可能性を既に知っています。そして彼らはいつでもどこでも、それが在庫管理であれパイプライン管理であれ、リアルな情報、つまり常に最新のデータにアクセスしたいと思っています。そしてそれを実現できるのはモバイル端末だけなのです。"

5月に行われた同社のカンファレンスにおいてCo-CEOBill McDermott氏はモバイルアプリケーションが与えるインパクト、つまりモバイルアプリを介して"リアルタイムな"情報の操作ができるようになることについて強調しています。そしてその技術は近いうちにSAP社によって実現されるそうです。

基本方針の中で同氏は次のように話しています。

"リアルタイムな情報はビジネスだけでなく、人類の文化をも変えます。中国では人々はデスクトップ時代を飛び越えてモバイルのほうへ動いています。ですから私たちもモバイルを新しいデスクトップと捉えています。"

それにより、従来のビジネスアプリケーションのようにソフトウェアが処理を行い、人間が例外管理を行うというものから、リアルタイムな情報へのアクセスが可能になることにより、まったく違ったビジネスアプリケーションが生まれるということも示唆しました。

つまり、業務システムのクライアントがPCからモバイル端末へ変わる、ということは単にデバイスの形態が変わるだとか、どこからでもアクセスが可能になるといった変化だけでなく、業務プロセスそのものが変わるということなのです。

これまではインプットとアウトプットの情報にしかアクセスできなかったのが、処理途中の情報(その時点での最新の情報)へのアクセスが可能となることによってソフトウェアは従来のように「情報を処理する」ツールではなくなると言っても過言ではないのかもしれません。

もちろん、パソコンに代わってモバイル端末がクライアントとなるためにはSAP社だけでなく、通信会社、ハードメーカー、アプリ開発者など様々な業界が協力して取り組む必要があります。そして越えなければならない大きな壁もあります。

消費者の心理

米シティ銀行は、顧客に向けて自社が提供するモバイルバンキングアプリのアップデートを行うよう発表しました。

これはiPhone経 由で取引を行っているユーザの取引情報が、モバイル端末上に「アクセスできる状態」で保存されていることがわかったからです。情報は暗号化されてはいるも のの、端末が第三者の手に渡れば最悪の場合情報が取り出されて悪用されかねない状態だったのです。今回のセキュリティ欠陥による被害は報告されていないと のことですが、ユーザの不安を煽ったのは言うまでもないでしょう。

KPMGがアメリカの消費者に行ったアンケートでは、モバイル端末を使っての金融取引を行ったことがあるかという質問について、"はい"と答えたのはわずか16%の消費者だったそうです。また、モバイル端末のセキュリティについては54%が不安を感じると答えています。2年前の2008年に行った調査では65%だったことから不安の解消は見られるそうですが、このアンケートはとりわけアメリカの消費者がモバイルに懐疑的だという結果を示しています。金融取引に関するアンケートではアメリカの16%に対し、ヨーロッパやアジアでは約2倍の3分の1の消費者が行ったことがあると答えています。

これは先の記述にもあるとおり、ヨーロッパやアジアなどはアメリカと比べて、モバイル先進国と呼ばれている地域である新興国では人々がデスクトップを持つ前にスマートフォンが主流になったことも関係しているのでしょう。

つまり、技術の進歩だけでなく、利用者の不安を取り除き、受け入れてもらうこともクライアントとしてのモバイル端末の浸透を進める鍵と言えるでしょう。

 

大きな変革には未知への不安も大きくなります。

たとえばいまや携帯電話やゲーム機にも付けられ当たり前のように使われているカメラも、世の中に出てきたばかりの頃は撮影時に被写体の魂が抜かれると信じられ恐れられてました。

しかし現代においてはそれを信じている人はほぼいません。

SAP社が掲げるように、モバイルがクライアントになるということはデバイスの形が変わるということと同時にライフスタイルへの大きな変革を人類にもたらすでしょう。

朝、会社に着いて席に座り、パソコンを立ち上げるということが日常ではなくなる日も、すぐ近くに迫っているかもしれません。


参考:

SAP Tries One Platform For Mobile Devices InformationWeek MARCH 8, 2010

Citibank Warns Of iPhone App Security Flaw

http://www.informationweek.com/news/smb/security/showArticle.jhtml?articleID=226200280

Mobile Security, Privacy Concerns Decreasing

http://www.informationweek.com/news/security/reviews/showArticle.jhtml?articleID=226200259&queryText=mobile%20security


~品川から世界のITシステムをみつめる~

品川港南口桟橋ちかく。

頑張れば東京湾を見渡せる、とある会社の会議室で、東京湾の向こうに広がる太平洋と世界に思いを馳せ、海外のビジネス市場でどのようなITシステムがトレンドとなっては廃れていくのか、またそれらを支える技術はどんなもので、私たちの生活やビジネス環境はどう変わっていくのかを、海外システムに興味を持つ営業やマーケティング、技術者が集まり、夜な夜な熱い論議を交わします。
たまにはビールを片手に。

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スペイン留学時に学んだパエリア作りをメンバに教えてくれるなど、社内にスペインの風を運ぶ。

・U田
大学・院と情報システムを専攻した生粋の技術者。
在学時と就職後に海外プレゼン経験あり。
研究会での的確なアドバイスはさすがとメンバをうならせる。

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アメリカ留学での語学を活かし、海外営業担当に。
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