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e‐Marketing文化論~新しい絆の時代へ 第5回 バーチャル・コミュニティ
2008年08月13日 17:40

マーケティングのパラダイムシフト
インターネットがもたらした情報非対称性の解消やコミュニケーションの双方向化によって,さまざまなビジネス主体がお互いに対等の立場で緊密に情報交換し,かつ語り合いながら新しい価値を創造していく(「共創」と呼ばれています)時代になりつつあります。

そもそも経済学における「市場」とは,売り手(供給)と買い手(需要)の交換関係を言います。そして取引とは,余剰を持つものと必要とするものとの対等の関係です。しかし,マーケティング(学)においては,早くから「市場は供給者が創造していくものである」という行動の科学としてとらえられてきました。供給側からの市場に対する働きかけのベクトルとして理解されてきたのです。

ですから,「マーケティング」という用語すら今後は変更されるべきではないかと思いはじめています。いや,そうでなければ価値共創の21世紀のビジネスを正しく理解し,推進できないのではないでしょうか。おじさんとしては,次回(最終回),そういう意味で,マーケティングに変わる新しいビジネス用語をちょっとご提案しておこうと考えています。

競争の時代の終わり
もちろん,現在も,ビジネスは「競争(戦争)」のメタファーで語られるとおり,売り手同士の激しいシェア獲得競争,市場開発競争ですし,マーケティング・ミックスにおける巧妙なプロモーションによる消費者の欲望の開発(市場創造)は,現代マーケティングの最も重要なテーマです。

しかし,今やe-Marketingの世界においては,横の連携やSCMにおける全体最適などの合従連衡こそが新しい成功の方程式になりつつあります。また,消費ニーズの成熟化のなかで,売り手と買い手がともに手を携えて学習しながら新しい価値を創造し,末永い取引関係を持続する(アフター・マーケティングと呼ばれています。LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)もそういう発想でしたね)時代が到来しています。

20世紀の巨大資本による市場支配とマス・マーケティングが席捲していた市場が,ICTの進展によって,再構築されはじめているということでしょう。いうなればビジネス構造が,原初的な交換関係に回帰しはじめていると考えてもよいのではないでしょうか。余談ですが,これがビジネス構造だけではなく,社会のさまざまな対立軸を解消し,人々のあらゆる関係が,「対話」とか「協調」に昇華していくさきがけなのかもしれないと考えるとこれから生きていくのが少し嬉しくなってきます。

バーチャル・コミュニティ
ところで,インターネットがもたらしたワン・ツー・ワン(個の関係)とネットワーク(集合の関係)とは実は表裏一体です。インターネットによるネットワークで結ばれた集団は,本来のコミュニティと類似したものという意味で「バーチャル・コミュニティ」と呼ばれます。

コミュニティという言葉は,一般的には「地縁や血縁で深く結びついた伝統的社会形態」から派生し,近代国家や会社のように利害関係に基づいて人為的に作られた集団(集合)を意味します。コミュニティにおける仲間意識と情報交流は,社会生活上常に何らかの集団的な行動や感情移入(共感)を求める人間の特性でもあります。今や,リアルな社会のコミュニティが崩壊しているともいわれますが,そのぶん,バーチャルな社会でコミュニティが増殖し続けています。

ところで,ビジネス社会におけるバーチャル・コミュニティは,参加主体の関係性に注目すると,一般的には次の四つに分けられます。すなわち,企業内(E to E),企業間(B to B),企業と顧客間(B to C),顧客相互間(C to C)です。

このうち,企業内コミュニティは,イントラネットやグループ・ソフトウエアによる情報共有や情報交換の容易さと活性化が,新しい労働環境や組織的関係を構成するとともに,第一線の顧客対応においても大きなサービス品質の向上をもたらしています。

企業間コミュニティは,いうまでもなく,グローバルに全体最適を目指す合従連衡やSCMの場であります。そこに競争関係を乗り越えた,新しいB to Bの関係性が凝縮されています。また,最終的には品質向上やコスト削減によって最終顧客にとってもメリットは大きいものがあります。

企業と顧客間コミュニティは,「ネットビジネス」の場になっていることはお気づきのとおりです。そこでは,企業と顧客が双方向の情報交換を通じて新しい価値を共創していく場であるとともに,もうひとつの側面として,企業が仲介者(インターメディアリー)として,顧客間を繋いでいます。

顧客相互間コミュニティは,具体的にはブログやSNSなどで顧客同士が情報交換する場です。さまざまな製品やサービスの利用体験や感動を語り合う口コミ(Word of mouth)の舞台です。以前は「ユーザー・コミュニティづくり」というB to Cマーケティングの課題として企業が積極的に関与してきました。しかし最近は,数え切れない個人サイトが立ち上がって,製品やサービスについて消費者の本音が交換されています。企業は,インテグリティ経営をちゃんと行わなければ,事業上の「ほころび」は瞬く間に世の中にひろがってしまいます。

バーチャル・コミュニティは,地縁コミュニティのような物理的な範囲や距離を超えるものですが,一方,ブログやSNSにおけるコミュニティを観察していると,それも無限に拡大するものではなく,一定の規模があるように感じます。

そこを定量的に明確にできるほどのデータはいま持っていませんが,それはコミュニティにおける共通の価値観の性格(目的と種類)とそのコミュニティの精神的拘束の強弱の度合によるのではないでしょうか。このようなコミュニティの規模の限界を突破する方法は,構成員にあまり強固な連帯や共鳴を要求しないことです。すなわち「緩やかなネットワーク」の構築ということです。バーチャル・コミュニティにおけるハンドルネームというのも,半匿名性というたいへん微妙なコミュニケーション・ツールではないでしょうか。

ICTが変える取引社会の構造
コミュニティの構成メンバーは,特定のコミュニティに所属するだけではなく,縦横無尽にさまざまなコミュニティとも接触します。そこが,従来型のシンジケートとは大きく違う点です。お互いは,お互いのONLY ONEではありえないのです。価値共創の場として強固な信頼関係に結ばれているように見えて,コミュニティのメンバーの多くは,実に身軽に多くのコミュニティ間を移動していきます。

ICTの時代のビジネス・マネジメントとして,バーチャル・コミュニティ・マネジメントという概念は重要だと思います。この場合のマネジメントの意味は,従来型の管理的な発想ではなく,構成員の協調による全体最適努力,メンバー相互の誠実さや思いやり,情報に関する信頼の確保,製品やサービスの共創プロセス,誠実な債務履行などによるそれぞれの独自の「コミュニティ文化」の創造とも言い換えることができます。

マーケティング用語にいう「差別化」も,「バーチャル・コミュニティにおける文化の差異化」ということになりましょう。それぞれの企業と製品やサービスにおける直接的な差異はもちろん重要ですが,新しい時代は,それを創りだし,そこに価値を賦与しているバーチャル・コミュニティ文化こそ,製品やサービスの意味と価値を決めていく時代だといえるでしょう。

次回(最終回)は,ICTの未来とマーケティングの未来を融合して,次の時代を予測したいと思います。
コラム CIOへのメッセージ -アーカイブ-
e‐Marketing文化論~新しい絆の時代へ

わが国のインターネット利用人口は着実に増加を続け、いまや9,000万人を超えるという状況の中で、現代ビジネス社会はどのように変わってきたのでしょうか。そして、何が変わっていないのでしょうか。世界がネットワークによって一つに繋がれば繋がるほど、一人ひとりの個性がはっきり浮かび上がってきます。目先のトレンドや技術革新に、近視眼的に目を奪われないで、わたしたちが生きているe(electronic)の時代の進むべき方向を見定めましょう。

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筆者紹介

松井一洋(まつい かずひろ)
広島経済大学経済学部教授(メディア・マーケティング論,e-マーケティング論,企業広報論,災害情報論)
阪神淡路大震災時(1995.1.17)は,関西大手私鉄広報マネージャー。広報室長兼東京広報室長、コミュニケーション事業部長を経て,グループ会社二社の社長。50歳台前半に大学教員に転じ,2004年4月から現職。体験的な知見を生かした危機管理を中心とした企業広報論は定評がある。最近は,地域の防災や防犯活動のコーディネーターをつとめるほか,「まちづくり懇談会」座長として,地域コミュニティの未来創造に尽力している。著書に『災害情報とマスコミそして市民』ほか。

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