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e‐Marketing文化論~新しい絆の時代へ 第2回 ビジネスモデル
2008年04月30日 17:35

ICTがもたらした新しいビジネス社会
前回,e-Marketingの三つのポイントとして,「新しいビジネスモデルの展開」,「パーソナル・マーケティング化」,そして「4Pマーケティングの変革」をあげました。ここでそれらを実現したインターネットの基本機能について振り返っておきましょう。ICTビジネスのフロントでご活躍のみなさまがたには釈迦に説法でしょうが,少しお付き合いください。

ポスト産業社会の新しいメディアとしてのインターネットは,その発祥や初期の目的はともかく,情報のデジタル化(Digitalized)技術により,ネットワーク化(Networked),個別化(Individualized),双方向化(Interactive)の四つの画期的要素を実現しました。

そして,これらの四つの四機能が,成熟化した現代消費社会において,従来のマーケティングが直面していたいくつかの課題を見事に解決に導きました。一言でいえば,価値観の多様化に対応する「顧客カスタマイズ」です。ビジネス現場にインターネットが浸透することで,それが容易に可能になったのです。(図2)
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図2
新しいビジネスモデルの展開
それでは,e-Marketingの三つのポイントについて順に考えていくことにします。 まず「新しいビジネスモデルの展開」です。企業は,ビジネスを推進するにあたって「わが社はどんな企業であり,どんな企業になろうとしているのか」ということを定めます。これを事業領域(ドメイン)と呼びます。簡単にいえば「何を(what)」,「誰に(who)」,「どのように(how)」提供していくのかということです。これが会社のビジネスのモデルですから,ビジネスモデルという概念は,従来から存在していたものです。

しかし,従来は同業種であれば,ほとんど同じようなビジネスのやりかたをしてきました。ですから,あらためてビジネスモデルを話題にするまでもありませんでした。企業間の競争は,事業規模(規模や範囲の経済)と製品の品質などによって争われてきました。

ICTの進展にともなってあらためてビジネスモデルという言葉が注目されるようになったのは,上に述べたインターネットの機能によって,ビジネスモデルそのものも競争の要素になったことです。ビジネス・フィールドが,リアルの世界だけではなく,バーチャルの世界にも広がり,想像もしなかったような商取引の範囲と仕組みが発明されるようになってきました。そうしたビジネスの仕組みの独自性を「ビジネスモデル特許」として保護しようということになったのです。

よく教科書であげられているeビジネスモデルとしては,顧客直結型のダイレクト・モデル(DellのBTO:built to orderやAmazonのワンクリックモデルなど),情報検索のポータルサイト(Yahooや Googleなど),オークションサイト(リバース・オークションを含む)などがあります。これらは,いずれもインターネットの四つの要素をビジネスに組み込んだ新しい商取引の仕組みといえるでしょう。

そもそも,eビジネスに関しては,そのアイデアの独自性ひとつで,従来のリアルワールドに君臨する巨大企業を凌駕するネットベンチャーが出現するというダイナミズムに胸のすくような快感がありました。それはちょうど20世紀の産業社会の重厚長大型企業から,高度情報化社会への転換と軌を一にするものでした。そこにインターネット出現の画期的意義もあります。

しかしながら,一時期に盛んに開発されたビジネスモデルも,このところアイデアが出尽くした感がなきにしもあらず。図2に示したように,インターネットの四つの要素がもたらしたマーケティングの進化(Direct Marketing,Database Marketing,One to One Marketing)が具体的に形になったものがビジネスモデルですから,ICT技術における次のブレークスルーがない限りは,ビジネスモデルにおける決済方法等のバックアップ強化等の信頼性のための向上アイデアを除いては,人間の英知にも限りがあるということでしょうか。

さらに問題なのは,インターネット社会に芽生えたビジネスモデルが,ビジネス界のみならず,人間社会全体を飲み込むばかりに巨大化し,世界を駆け巡るあらゆる情報を管理し始めたのではないかという事実に対する認識も新たにしておかなければなりません。Web2.0や3.0と喧伝される高度情報化社会も,必ずしも手放しで人間の幸せな未来を切り開くと言えないのではないでしょうか。これが,いつものおじさんの姿勢ですね。

e-Marketingにおけるビジネスモデルの構造
ここで,忘れてはならないインターネットのもう一つの切り口にも触れておきましょう。今回のシリーズのテーマである「e-Marketing文化論」の本質をなす部分です。インターネットの四つの要素によって人間が獲得した新しい情報文化の地平です。(図3)
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図3

簡単にいえば,インターネットが人間の生活の与えた特筆すべき特性は,グローバルな情報流通に,時間という観念が不要になったこと,バーチャル(仮想)空間を創出したこと,そして,従来のメディアにはない優れた双方向メディアとしてコミュニケーションを変容しつつあるという三つです。

まず,時間と空間の超越について考えましょう。 「グローバルな情報流通に時間の観念が不要になった」とは,言い換えれば,ビジネスプロセスを可視的,同期的に把握できるようになったことです。たとえば,宅配便に委託した品物の所在がいつでも確認できるのが身近な例ですね。

この機能による(調達を含む)物流の可視化は,SCM(Supply chain Management)を抜本的に変革し,また,デザイン,製品化,販売というプロセスにおける顧客情報の同期的把握は,流通システム全体の再設計を可能にしました。製品の販売以前から,販売後までの一連のビジネスプロセスを統合化することで,もっとも効率的で,かつ顧客サイド(起点)に立った商品提供が可能になりました。アパレル産業における成功事例などについて後で詳しく見ていきましょう。

もうひとつは,「バーチャル空間の創出」です。従来は,リアルなビジネス環境における競争がビジネスの本質でしたが,インターネットが無限のバーチャル空間をビジネス社会に提供しました。たとえば,松井証券が,リアルな店舗と営業社員という従来型の証券業ビジネスモデルをやめ,インターネットによって営業行為に人間を介在させないオンラインのビジネスモデルを構築して成功したことはあまりにも有名です。

インターネットとマーケティング・パラダイムの改革論

古来,新しいメディアの出現は,常に人間の「身体機能の拡張」(マクルーハン)をもたらしてきました。「情報のデジタル化」による新しいビジネスモデルの創造と,「時間と空間の超越」によるビジネスプロセスと構造の変革というのも,そういう意味でビジネスパラダイムが抜本的に変革したというものでもありません。

前回申しあげたように,インターネットという新しいメディアの出現によって「価値創造と価値移転」という経済活動の本質が変わったわけではないという視点は忘れないようにしたいと思います。驚天動地の黒船騒動のような発想でICT技術の進歩に飲み込まれないようにしたいものです。

しかし,一方で,インターネットが画期的メディアであるといわれる所以は,何といってもコミュニケーションにおける「双方向性」です。これがビジネスの技術的革新ではなく,マーケティング理念を抜本的に変革しようとしています。よくいわれる売り手と買い手の情報非対称性のビジネス構造変化はもちろんのこと,ビジネスにおけるコミュニケーションのありようそのものを変革するものです。

インターネットの利便性という目先の視点にかまけている間に,情報社会と商取引形態の基本構造が大きく変わり始めていることを再認識する必要があります。また,そこにこそ,新しいビジネスチャンスが開けているのです。 次回は,このコミュニケーションの「双方向性」を道標にして,「パーソナル・マーケティング化」について深めたいと思います。

コラム CIOへのメッセージ -アーカイブ-
e‐Marketing文化論~新しい絆の時代へ

わが国のインターネット利用人口は着実に増加を続け、いまや9,000万人を超えるという状況の中で、現代ビジネス社会はどのように変わってきたのでしょうか。そして、何が変わっていないのでしょうか。世界がネットワークによって一つに繋がれば繋がるほど、一人ひとりの個性がはっきり浮かび上がってきます。目先のトレンドや技術革新に、近視眼的に目を奪われないで、わたしたちが生きているe(electronic)の時代の進むべき方向を見定めましょう。

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筆者紹介

松井一洋(まつい かずひろ)
広島経済大学経済学部教授(メディア・マーケティング論,e-マーケティング論,企業広報論,災害情報論)
阪神淡路大震災時(1995.1.17)は,関西大手私鉄広報マネージャー。広報室長兼東京広報室長、コミュニケーション事業部長を経て,グループ会社二社の社長。50歳台前半に大学教員に転じ,2004年4月から現職。体験的な知見を生かした危機管理を中心とした企業広報論は定評がある。最近は,地域の防災や防犯活動のコーディネーターをつとめるほか,「まちづくり懇談会」座長として,地域コミュニティの未来創造に尽力している。著書に『災害情報とマスコミそして市民』ほか。

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